ニコチンについて(1)
タバコのパッケージには、必ずタールとニコチンの量が表記されています。
この表記に対して、数値が多いほどがんになる確率が高いであるとか、健康に悪いから1mgしか吸わないという話をよく聞きます。
それでは、このニコチンとタールとは一体どういうものかを見ていきます。
タバコの煙の中には、4000種類以上の化合物が含まれており、これらは「ガス状物質」と「粒子状物質」に分けられます。
このうちの粒子状物質に含まれるのが、ニコチンとタールです。
まず、ニコチンから見ていきましょう。
フィルターを通して体内に入ったニコチンが血流を通して全身に回り、脳に到達するまでの時間は約7秒と言われています。この7秒の間にニコチンはさまざまな影響を体に与えています。
1つ目が、大脳(中枢神経系)への刺激です。脳からは、気持ちを鎮静させるセロトニンや興奮作用をもたらすドーパミンと言われる神経伝達物質が放出されています。
これを伝達するものをシナプスといいます。
このシナプスの中にはニコチン受容体というものがあり、体内に入ったニコチンはここを刺激するのです。
その結果、刺激された受容体は、セロトニンあるいはドーパミンを過剰に放出してしまいます。
このようなわけで、朝の一服で元気に目覚めたり、緊張した時に吸うと落ち着くのはこのような理由からです。
ニコチンについて(2)
ここまで見てきたニコチンの効果は、比較的よいものですが、その裏には恐ろしい一面があることも忘れてはなりません。
まず、シナプスに存在するニコチン受容体の増殖があげられます。
ニコチンを継続的に摂取することで、受容体の数も増えていくのです。
ニコチンはしばらくすると体内から消えていきますが、増殖したニコチン受容体は残存し続けます。
すると、受容体が「ニコチンを体内に取り入れたい」と主張しはじめます。
そして、その希望が叶えられないという事態になると、イライラしたり、気分が落ち着かなくなります。
よく、「ニコチン中毒(正しくはニコチン依存)」という言葉を聞きますが、これこそがその中毒状態の正体であるわけです。
さらに、脳だけではなく、ニコチンは消化器系にも働きかけます。
ニコチンのほかの働きとしては、胃の働きの低下、血圧低下、血管の収縮などがあり、人間の健康を少しずつむしばんでいくという恐ろしい一面があることを覚えておく必要があります。