口付紙巻きタバコと夏目漱石
次に紹介するのは、日本ではもう見ることのできない「口付紙巻きタバコ」についてです。
1904年に専売局が発足すると同時に、それまで数多くあった口付紙巻きタバコは4銘柄のみになりました。
「敷島」「大和」「朝日」「山桜」です。
この4銘柄の名前は、タバコ好きだった国学者・本居宣長の和歌に由来すると言われています。桜を愛でて詠んだ次の和歌です。
「しき嶋の やまとごころを 人とはば 朝日ににほふ 山ざくら花」
彼はこの歌にもある通り、「大和心」つまり日本の心を愛しており、専売局も日本人の心を大事にしようというメッセージが込められています。
そんな口付紙巻きタバコのうち「朝日」と「敷島」を好んで吸っていたのが、明治の文豪夏目漱石です。彼の作品の中にも、「朝日」と「敷島」がよく登場します。
例えば、「吾輩は猫である」の苦沙弥先生は「朝日」を吸っており、それに対し門下生の寒月君は「敷島」を吸っている描写が出てきます。
その他、「坊っちゃん」の主人公、「草枕」の主人公、「門」の宗助は「敷島」を吸っているという設定です。